おうちで楽しく!「触られるのが苦手」を克服する『魔法のくし』遊び
- 孝一 石田
- 2025年10月31日
- 読了時間: 7分

ども、石田です。
ヘアカットを嫌がるお子さんは、その様子を細かく観察してみると、実に多くのハードルがあります。(※詳細は、以前記事を書いています。ご覧になっていない方は、文末にリンクを添付してますので、そちらからご覧ください。)
中には、
「うちの子、そもそもハサミの前に、頭や髪を触られること自体をすごく嫌がるんです…」
「くしを見せただけで逃げてしまうし、シャンプーなんてもう戦場です…」
これも、本当によくあるお悩みです。 ハサミという「道具」以前に、ヘアカットに不可欠な「髪に触れる」「くしでとかす」という行為そのものに、強い抵抗を感じるお子様は少なくありません。
その原因の多くは、
触覚過敏(しょっかくかびん)
にあります。
そこで今回は、「ハサミと仲良くなる」ための、その一つ手前の大切なステップ。『療育カット』の現場でも実際に取り入れている、触覚過敏を和らげるためのアプローチをご紹介します。
それが、
【感覚(触覚)】「魔法のくし」遊び(段階的脱感作)
です。
なぜ「くし」すら嫌がるの?「触覚過敏」の正体
「ただ髪をとかすだけなのに、どうしてあんなに泣くんだろう?」 そう不思議に思うかもしれません。
その背景にある「触覚過敏」とは、決して「わがまま」や「我慢が足りない」ということではありません。 私たち大人が「心地よい」と感じる刺激や、気にも留めないような「些細な」刺激を、脳が「不快」あるいは「危険!」と判断してしまう、感覚の特性なんです。
例えば、
服のタグが、チクチクを通り越して「痛い」と感じる
そよ風や、ふとした軽い接触が「くすぐったい」を通り越して「ゾワッとする不快感」になる
頭皮や顔まわりは、特に神経が集中しているデリケートな部分です。 そこに、プラスチックや金属の「くし」という異物が触れること。 髪が引っ張られるかもしれないという予測不安。 これらが組み合わさって、「耐えられない不快感」としてお子様を襲っているのです。
では、どうすればいいか。 「我慢しなさい!」と押さえつけるのは逆効果です。恐怖心が強まるだけですよね。
そこで、「段階的脱感作(だんかいてきだっかんさ)」というアプローチです。 難しい言葉に聞こえますが、やることはシンプルです。
安心できる場所(刺激)から始めて、少しずつゴールに近づけていく
この「安心・安全な練習」を遊びの中で行うのが、今回の『魔法のくし』遊びの最大の目的なのです。
【実践】「魔法のくし」遊びの具体的なステップ
この遊びのゴールは、「髪をキレイにとかすこと」ではありません。
「くしが体に触れる感覚は、安全で、楽しいものだ」とお子様の脳に新しい記憶としてインプットすること
です。
準備するもの
お子様専用の「くし」
先端が尖ったものではなく、肌あたりの良い、先の丸いプラスチック製のくしや、赤ちゃん用の柔らかいブラシがお勧めです。
可能なら、お子様自身に色や形を選ばせてあげてください。「自分で選んだ」という事実が大切です。
魔法のアイテム(シールなど)
お子様の好きなキャラクターや、キラキラしたシールを用意します。
絶対に守るルール
この遊びの間は、絶対にハサミを意識させないでください。「くしに慣れたら、次はハサミね」という流れもNGです。あくまで「くしと仲良くなること」だけに焦点を当てます。
ステップ1:まずは「手」から(手櫛あそび)
以前の記事で、「ハサミと仲良くなる遊び」として、本物のハサミを使う前に、まず「チョキチョキ指遊び」から始めることをご紹介しました。 今回も、その考え方はまったく同じです。
いきなり「くし」という“道具(異物)”にいく前に、まずは、お子さんが世界で一番安心できる、パパやママの『手』を使って、頭や髪に触れられることに慣れる練習から始めましょう。 僕はこれを「手櫛(てぐし)遊び」と呼んでいます。
やり方はとても簡単です。 お子様がリラックスしている時や、テレビに夢中になっている時など、自然なタイミングで、親御さんの手のひらで頭を優しく撫でたり、「気持ちいいね〜」と声をかけながら、指を開いてそーっと手櫛でとかすフリをしたりします。

ここでの目的も、もちろん髪を整えることではありません。「頭や髪に何かが触れる感覚は、安全なんだ」「心地よいものなんだ」と知ってもらうことです。
この「手」という最も安心できるツールで築いた土台が、次のステップである「くし」という道具への、大切な大切な橋渡しになります。
ステップ2:『魔法のくし』を誕生させよう!
まず、用意したくしにお子様と一緒にシールを貼ります。
「〇〇(お子様の名前)くん・ちゃんだけの、魔法のくしができたね!」
「このくしで触ると、みんなニコニコになっちゃうんだよ」
と、ポジティブなイメージを植え付けます。この時点で嫌がるなら、無理に触らせず、見える場所に置いておくだけでもOKです。

ステップ3:「安心できる場所」からスタート(手・腕)
いきなり頭を狙ってはいけません。スタート地点は、頭から最も遠く、本人が見て安心できる「手」や「腕」、「足」などです。
まず、パパやママが自分の手の甲を「魔法のくし」で優しく撫で、「わぁ、気持ちいい〜!」と大げさなくらいリラックスした表情を見せます(=モデリング)。
次に、「魔法のくし、〇〇くんの手にタッチしてみるね」と必ず声をかけてから、優しく触れます。
【ポイント】 触覚過敏のお子様の中には、「サワサワ〜」という軽い刺激(くすぐったい)よりも、「ぎゅーっ」と少し圧をかけた刺激(マッサージ)の方が安心できる場合があります。お子様の反応を見ながら、どちらが心地よいか探してみてください。
「♪きらきら星」などの歌に合わせて、リズムよく触れるのも効果的です。

ステップ4:少しずつゴールに近づく(肩・背中・首)
手や腕でリラックスできるようになったら、次のステップに進みます。「次は、肩をトントンするよ」「背中をシューって滑るよ」と、必ず実況しながら、肩や背中を撫でます。
ここでの難関は「首(うなじ)」です。髪の生え際は特に敏感なエリア。もし、お子様の表情が少しでも曇ったり、体がビクッとこわばったりしたら、すぐにストップしてください。そして、安心できる「腕」や「背中」のマッサージに戻ります。
「嫌だと感じたら、すぐに安全な場所に戻れる」という安心感を何度も経験させることが、信頼関係の土台になります。

ステップ5:最終関門(髪の毛・頭皮)
首筋までリラックスできるようになったら、いよいよ「髪」です。ここでも、いきなり頭頂部からとかしてはいけません。
まずは、くしを髪の毛の「毛先」に、ちょん、と当てるだけ。

次に、髪の表面を「サッ」と一度だけ撫でる。

それができたら、初めて「頭皮から毛先まで、ゆっくり一回とかす」にチャレンジします。この時、もう片方の手で髪の根元を軽く押さえてあげると、髪が引っ張られる感覚が和らぎ、不快感を減らすことができます。

遊びを成功させるための「3つの約束」
この療育的アプローチを成功させるために、親御さんに絶対に守っていただきたい「3つの約束」があります。
1.絶対に「無理強い」しない。必ず「楽しい」で終わる
これが最も重要です。「あと1分だけ」「ここまでやろう」と大人がゴールを決めないでください。お子様の表情が少しでも曇ったら、その日はそこで終わってかまいません。
「嫌なことを我慢できた」ではなく、「楽しい遊びができた」というポジティブな記憶で終わらせることが、次への意欲に繋がります。
2.「ヘアカット」や「ハサミ」と絶対に結びつけない
「これができたら、髪切れるね」という言葉は禁句です。その瞬間、この遊びは「楽しい遊び」から「ヘアカットのための訓練」に変わってしまいます。
あくまで「くしと仲良くなる魔法の時間」として、目的を完全に切り離してください。
3.「できた!」のハードルを極限まで下げる
「髪を全部とかせた」がゴールではありません。
「魔法のくしを、自分で持てた」
「手の甲に、1秒触れさせた」
「肩に触れても、ビクッとしなかった」
これら全てが、お子様にとっては大きな大きな一歩です。その小さな「できた!」を見逃さず、これでもかというくらい具体的に褒めてあげてください。その成功体験こそが、お子様の自己肯定感を育てます。
まとめ
ハサミの前に立ちはだかる「触られることへの恐怖」。 今回ご紹介した『魔法のくし』遊びは、その高い壁を、お子様のペースで、一歩一歩、安全に乗り越えるための「遊び」です。
焦る必要はありません。他の子と比べる必要もありません。 1ヶ月かかっても、手の甲を触れるようになったら、それは素晴らしい進歩です。
この遊びで築かれた「道具(くし)への安心感」と「親御さんへの信頼感」という土台が、いずれ必ず、ハサミやバリカン、そして美容室という次のステップへ挑戦する勇気へと繋がっていきます。
ぜひ、今夜からでも「魔法のくし」を一本、用意してみてください。
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